新型コロナ 飲み薬モルヌピラビル(ラゲブリオ)一般流通開始へ
新型コロナウイルスの飲み薬「ラゲブリオ」について、製造会社の日本法人は薬の生産体制が整ったとして、一般の医薬品と同様に卸会社を通じた流通を始めると発表しました。必要な患者に速やかに処方されることが期待されるとしています。
これまでは流通量が限られていたため、政府が買い上げて薬局や医療機関は「登録センター」に登録して受け取る方式でしたが、今後は卸会社を通じて医療現場などに流通するようになるということです。
新型コロナウイルスの飲み薬モルヌピラビル(ラゲブリオ)とは
「モルヌピラビル」は、アメリカの製薬大手「メルク」が開発した重症化を防ぐ効果があり、感染から間もない患者に使える初めての飲み薬です。
ウイルスが細胞に侵入したあと、設計図となる「RNA」をコピーして、ウイルスが増殖するのに必要な酵素の働きを抑え、増殖を防ぎます。
感染が確認されたらなるべく早く、症状が出た場合は5日以内に服用することが推奨され、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者で、肥満や糖尿病など、感染した場合に重症化するリスクが少なくとも1つはある人が対象です。
資料;新型コロナウイルスの飲み薬モルヌピラビル(ラゲブリオ)
副作用
重篤な副作用は報告されていません。
よくみられる副作用は、下痢・吐き気・嘔吐・めまい・頭痛、発疹・じんま疹
処方の対象者
症状があり、重症化リスクがある18歳以上のPCR陽性者のみ処方します。
妊婦患者には禁忌です。
重症化リスク
・61 歳以上
・活動性の癌
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・肥満(BMI 30kg/m2 以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
・糖尿病
・ダウン症
・脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
・コントロール不良の HIV 感染症
・肝硬変等の重度の肝臓疾患
・臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
薬効薬理
発症 5 日以内の治療開始で、重症化・死亡リスクを88%下げることが確認されています。
作用機序
モルヌピラビルはプロドラッグであり、NHCに代謝され細胞内に取り込まれた後、活性型であるNHC-TPにリン酸化される。NHC-TPがウイルス由来RNA依存性RNAポリメラーゼによりウイルスRNAに取
り込まれた結果、ウイルスゲノムのエラー頻度が増加し、ウイルスの増殖が阻害される。
In vitro抗ウイルス作用
NHCはVero E6細胞を用いた細胞培養系でSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を示し、50%有効濃度(EC50値)は0.78~2.03μmol/Lであった。NHCはSARS-CoV-2の従来株(USA-WA1/2020株)、並
びにその変異株であるB.1.1.7(α株)、B.1.351(β株)、P.1(γ株)及びB.1.617.2(δ株)に対して同程度の抗ウイルス作用を示し、EC50値はそれぞれ1.41、1.59、1.77、1.32及び1.68μmol/Lであった。
In vivo抗ウイルス作用
SARS-CoV-2感染マウス、ハムスター及びフェレットモデルを用いてモルヌピラビルの抗ウイルス作用を確認した。マウスでは、モルヌピラビルはウイルスを接種した移植ヒト肺組織でのSARS-CoV-2の感染性ウイルス量を減少させた。SARS-CoV-2感染フェレットモデルでは、モルヌピラビルは上気道でのSARS-CoV-2の感染性ウイルス量を減少させ、同居させたウイルス非接種薬物非投与動物での感染性ウイルス量(感染フェレットから隔離後4日目)は検出限界未満であった。SARS-CoV-2感染シリアンハムスターモデルでは、モルヌピラビルは肺でのウイルスRNA及び感染性ウイルス量を減少させた。感染後に摘出した肺組織の病理組織学的検査で、媒体群と比較してモルヌピラビル群ではSARS-CoV-2のウイルス抗原量の低下及び肺病変の軽減が認められた。
薬剤耐性
細胞培養系でのSARS-CoV-2のNHCに対する耐性の誘導については検討していない。他のコロナウイルス(MERS-CoV)を用いた耐性誘導試験では、細胞培養系で30回継代した結果、2倍程度の感受性の
低下が認められた。この30回継代したMERS-CoVではゲノム全体にランダムに変異が認められた。
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